
映画やコマーシャルといった映像制作の世界ではディレクターや撮影などのクリエイティブな部分はもちろんのことですが、そのクリエイティブを補うマネジメントも重要になってくるという事はご存知だったでしょうか?
制作を統括するマネージャー職がプロデューサー(Producer)になる訳なのですが、一体どういう役割があるのでしょうか?
プロデューサーという言葉だけ聞くとカッコイイイメージを持ってしまいそうですが、実は映像制作には欠かせないチームメンバーの一人なのです。
プロデューサー巻きというファッションがあるようにカッコよくてお金を持ってそうなイメージがあるプロデューサーですが、元々「制作」である「Produce」と「〜する人」を組み合わせた単語になっているため「制作をする人」という意味を持っています。
映画プロデューサー(Film Producer)やTVプロデューサー(TV Producer)、音楽プロデューサー(Record Producer)のように同じプロデューサーの中でも業種などによって違っていたり、同じ業種でも更に細かくカテゴライズされてあったりしますが、彼らに共通するものは「一つのものを作る人」です。
日本だとプロデューサー=企画というイメージがあるため、企画ではないの?と思うかもしれませんが、基本的に作品を企画するプリプロダクションから編集のポストプロダクションまで関わることが多いため、実質制作の全てにおいて必要とされます。
筆者は主にフィリピンでコマーシャル等のプロデューサーとして活動しているので、日本とはまた少し違うとは思いますが、映像作品の企画、制作、統括をする役割という意味ではハリウッドであれ、日本映画であれ、コマーシャル制作であれ、どこも同じなのです。
プロデューサーの大まかな仕事
同じプロデューサーでも映像制作の規模やカテゴリによって少しずつ変わってきますが、今回は映画とコマーシャルでの役割をそれぞれ紹介したいと思います。
- 映画プロデューサー – 小説やコミックなどを映像化するのを企画や制作費のスポンサー探しを行ってから、キャスティングやディレクターなどの選定を行ったり、プロダクションの予算や全体的なスケジュールを作ります。プロダクションでは現場にいるアシスタント・ディレクター(AD)やライン・プロデューサーにまかせているため、スケジュール等の問題が無いかを確認します。ポストプロダクションは最終的な編集の判断や配給などに携わる事もあります。
- コマーシャル制作 – 見積もりを作ったり、予算内でキャストやロケーションなどのマネジメントを行います。映画プロデューサーと同じようにスケジュールを組んで、プロダクションでは基本的にクライアントのやり取りが発生するため、ロケーションに同行することも。ポストプロダクションではディレクターや編集者の判断がほとんどであるため、主にプリプロとポスプロに携わる事が多いです。
基本的に予算とスケジュールを組んで、制作にピッタリの人材を確保することが主な仕事ですが、この他にもロケーションへの許可や保険、安全配慮といった、制作における隅から隅まで関わる必要がある、かなり責任の重い役目を持つことになります。
ディレクターとプロデューサーの違い
制作時でのトップツーがディレクターとプロデューサーになるのですが、映像初心者には少し良くわからなかったりしますよね。シンプルに説明するとディレクターはクリエイティブ部分の責任者でプロデューサーはマネジメント部分の責任者になります。
本来、立場上プロデューサーがディレクターの上になるのですが、それはお互いの関係性や経験によって変わってくる場合があります。しかし、ディレクターはキャストやカメラの動きといった表現部分の判断を下し、プロデューサーはそのディレクターが絵にしたいものを予算や時間を配慮しながら計画を立てていくチームワークが必要になります。
そのためディレクターとプロデューサーの関係は強いものにする必要があります。時には対立も起こりえますが、作品を良い方向に導きながら、クルーの士気を上げてマネジメントが出来るようになるのが理想のプロデューサーと言えるでしょう。
プロデューサーの種類
映画製作などだと同じプロデューサーでも細かくカテゴライズされてあります。また予算などによってはそれぞれの役割を一人でこなすこともあります。主なプロデューサーは以下の通り。
エグゼクティブ・プロデューサー(Executive Producer= EP) – プロデューサーの中で一番トップに立っており、作品の統括をしています。EPは主にスポンサーになっていることが多く、その資金によって映画が作られ、売上の25%程度のシェアを持つことが出来ます。
- プロデューサー(Producer) – 映像制作に必要な予算やスケジュール、キャスティングやロケーションなどの企画、制作の統括を行います。
- ライン・プロデューサー(Line Producer = LP) – プロダクション当日に統括する役割を持っており、プロデューサーのスケジュールに沿って進行を進めます。基本的にADやプロダクションマネージャーと一緒に仕事することが多いです。
- コ・プロデューサー(Co-Producer = CP) – プロデューサーの次になるプロデューサー。プロデューサーと同じようにプリプロで作業します。大きいプロジェクトだと一人では大きい仕事をこなせないので、サポートの役割です。
- アソシエイト・プロデューサー(Associate Producer = AP) – ロケハンや許可証の申請など細かい作業をこなしてくれるプロデューサー。大きいプロダクションなどでは準備が多く必要になってくるため、アソシエイト・プロデューサーの数が多かったりします。
インデペンデント映画やコマーシャル制作などの小さいプロダクションになってくると、基本的にプロデューサーが上記全て一人でこなすことが多いです。
ディレクターや撮影監督などを目指している方は一見関係のない話だと思ってしまいますが、撮影時のスケジュールや予算についてはプロデューサー関係なく絡んでくる問題だと思うので、プロダクションマネジメントがある程度出来ていると、撮影がスムーズに行くのでオススメです。
こちらのサイトでは今後、海外のプロダクションで使用するプロデューサーのドキュメントやプロデューサーと撮影を兼用するマルチタスクした場合のメリットなどを紹介したいと思いますので、ぜひチェックしてみてくださいね!
(MIKIO)
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