映像撮影はフレームレート、絞りやシャッタースピードといったカメラの設定に加えて「どのように撮るか?」であるショットを決める必要もありますよね。
クローズアップやワイドなどのショットが思い浮かぶと思いますが、その他にもいろいろな種類のショットが存在しているということはご存知だったでしょうか?
ショット(Shots)とは「被写体をどのように撮るか?」を決めるもの。同じ被写体でも様々なショットを活用していくことで、それぞれ違う効果や印象を与えることが出来るメリットがあります。
映画やコマーシャルといった大規模な制作はもちろんのこと、YouTube動画や企業VPといった小規模の制作まで活用できるので、映像撮影(シネマトグラフィー)に興味がある方は覚えておきたいテクニックの一つです。
写真や絵画などでもこのようなショットを使うこともできますが、映像は「動き」が加わることで静止画とはまた違った表現を作れる強みがあります。
今回の記事ではそんな映像、動画撮影に必要なショットの種類と撮影例、海外での呼び方などを詳しく紹介したいと思います。
フレーミングとショット
ショット(Shots)を説明する前に同じようで、少し違うフレーミング(Framing)についてお話しましょう。
フレーミングとは被写体をどこに配置するか、どの角度で撮るか?という「構図」を表すもので、基本的にフレーミングを先に決めた後でショットを決めることが多いです。少し紛らわしいですが、簡単にまとめると以下のような形になります。
- フレーミング – 被写体をどこに配置するかを決めるもの。三分割法(Rule of thirds)や日の丸構図。被写体を撮影する角度=カメラアングルなど。
- ショット – 被写体をどのように撮るか(引き、寄り)、動きをつけるなど(フォーカス送りやジンバルなど)
似ているようで似ていないこの2つですが、しっかり理解しておくことでよりスムーズな撮影を行えるのでオススメです。
ショットの呼び方
ショットは大きく分けてワイドとクローズアップの2種類に分けることができますが、その間にはワイドからクローズアップにつながる段階的なショットがいくつか存在します。
まずはワイドショット(広角)から見てきましょう。海外(英語)でも基本的に同じショットを使いますが、呼び方が違うので合わせてそちらも紹介していきます。
ワイドショット(Wide shot)
日本の呼び方は被写体から遠い順にロングショット(LS)、フルフィギュア(FF)またはフルショット(FS)、ニーショット(KS)、ウエストショット(WS)。
海外では被写体から遠い順にワイドショット(WS)、フルショット(FS)、ミディアムワイドショット(MWS)、ミディアムショット(MS)になります。
クローズアップ(Close-up shot)
日本の呼び方は遠い順にバストショット(BS)、アップショット(US)、ディテール(D)、クローズアップ(CU)またはエキストリームクローズアップ(ECU)。
海外ではよりシンプルになっており、遠い順にミディアムクローズアップ(MCU)、クローズアップ(CU)、エキストリームクローズアップ(ECU)になります。
ショット種類と撮影例
ロングショット(Long shot) / 英: ワイドショット(Wide Shot)
建物の外観や風景などを撮影する際に使われるショットで被写体にダイナミックさを与えられます。デメリットとして人物の表情や細かいディテールを把握できなかったり、セリフがある場合は広角での撮影の影響でしっかりと収録できません。
フルフィギュア(Full Figure) / 英: フルショット(Full shot)
人物や物の全体像が見えるショット。人の場合は足から頭までがすっぽりフレームに収まるため、人物の動きを全て撮影したい時に便利です。
なお、足は写さないけれど膝より上を撮影する場合はニーショット(Knee shot)、英語ではミディアムワイドショット(Medium wide shot)と呼ばれます。
ウエストショット(Waist shot) / 英: ミディアムショット(Medium shot)
主に人物を撮影する際に使用されるショットで腰から頭の範囲を撮影します。被写体の表情が認識できるようになる反面、被写体やカメラの動く範囲が限られてきます。
バストショット(Bust shot) / 英: ミディアムクローズアップ(Medium close-up shot)
ウエストショット(ミディアムショット)より更に近く撮影し、胸の部分から頭までが入るように撮影するショット。手の動きが見える範囲になるので、アクションなど様々なシーンで活用できます。
アップショット(Up shot) / 英: クローズアップ(Close-up shot)
人物の肩から頭でが収まるように撮影するショット。海外の呼び方ではクローズアップに相当します。
クローズアップ(Close-up shot shot)
日本では顔の範囲を撮影する際にクローズアップと言いますが、海外の場合だとアップショットである肩の範囲から撮影してもクローズアップと言います。
人物の表情がよく分かるショットですが、物や小道具などに寄って撮影する際もクローズアップショットという言葉が使われています。
ディテール(Detail) / エキストリームクローズアップ(Extreme Close-up shot)
人物の場合は目や鼻、指などの細かい部分を撮影する際に使用するショット。こちらは細かい動きまで捉えることが出来るので便利ではあるものの、セリフがある場合は顔の表情などがわからない場合があります。
テクニックや追加機材を使ったショット
パン(Pan)、チルト(Tilt)
三脚や一脚の雲台にカメラを載せて、上下左右の動きを表現するテクニック。被写体の動きを追う時や人物または建物を登場させる時に活用できます。左右の動きが「パン(Pan)」、上下が「チルト(Tilt)」となり、「パンレフト」、「チルトアップ」のように動く方向を指定することもできます。
三脚するイメージが強いパン・チルトですが、手持ち(ハンドヘルド)撮影で同じように上下左右の動きを行う場合は「パン」、「チルト」となります。
肩越しショット / 英: オーバー・ザ・ショルダー(Over the shoulder)
主に2人以上の人物が会話しているシーンで使われ、一人目の被写体を撮影しながらもう一人の肩や頭、腰などをフレームに入れる撮影方法。人物以外でも前景に何かを入れるだけで同じような効果を得られるので、この呼び方をすることもできます。
主観撮影 / 英: ポイント・オブ・ビュー(Point of view shot)
カメラが被写体の目(主観)となり、撮影する方法です。海外ではポイント・オブ・ビューと言いますが、頭文字を取って「POV撮影(POV Shots)」と呼ばれることもあります。人物以外にも動物や虫、物などに主観撮影を与えることも可能です。
フォーカス送り / 英: ラッキング・フォーカス(Racking focus shot)
レンズのフォーカスリングを使って、AからBの被写体へとピントを調整する撮影方法です。それぞれ独立したショットを撮る必要はないので便利ではあるものの、タイミングや被写体にピントを合わせるのが大変だと感じる場合もあります。
登場ショット / 英: リビールショット(Reveal shot)
ショットの種類としてある訳ではありませんが、撮影や編集のテクニックの一つとして使われるショットです。
カメラのレンズを身体や壁などで隠して、カメラの動きに合わせてロケーションや人物を登場させる方法です。ショットによっては編集でマスクなどを組み合わせて別のロケーションに移動するなどのテクニックが使えます。
手持ち撮影 / 英: ハンドヘルドショット(Handheld shot)
「自然な手ブレ」をあえて演出する撮影テクニックで、ドラマやサスペンス、ホラーなど幅広いジャンルで使われています。視聴者がその場に居るかのようなリアリティーを出すことが出来るメリットがありますが、「自然な手ブレ」を表現できる様になるには練習が必要になってきます。
ドリー撮影 / 英: ドリーショット(Dolly shot)
カメラやオペレーターを乗せることが出来る台車のカメラドリー(Camera Dolly)を使って被写体を追ったり、ロケーション内を移動する撮影方法です。レールを敷いて撮影したり、タイヤを取り付けて撮影することもできますが、セットアップなどが時間掛かるのがデメリットです。
スタビライザー撮影、ジンバル撮影 / 英: Stabilizer shot, Gimbal shot
カメラの手ブレの動きや動きながら撮影ができるようにスタビライザーやジンバルを使って撮影する方法です。
ステディカム(Steadycam)などのスタビライザーは重りを使ってバランスを取る方式が一般的でしたが、現在ではより小型でモーターなどの電子制御のあるジンバルを使った撮影も増えています。
ちなみにドリーやスタビライザー、ジンバルを使って「被写体を追う撮影」のことをトラッキングショット(Tracking shot)と呼ぶこともできます。
クレーンショット / 英: Crane shot
カメラまたはオペレーターを載せたクレーンを使って撮影する方法。上下の動きだけではなく、前方後方などクレーンの可動範囲であれば自由自在に動かすことができます。より小型のジブ(Jib)を使ったジブショット(Jib shot)もこのショットに当てはまります。
空撮、ドローン撮影 / Aerial shot, Drone shot
ヘリコプターなどを使った空撮は高価なものでしたが、リモコン操作で飛ばせるドローンが普及したことで、空撮が身近なものになりました。
クレーンのような動きができるほか、より遠くから撮影できるので風景や建物を撮影するのには便利ではあるものの、国や地域によってドローンの法律や規制が変わってくるので注意が必要です。
今回の記事では17種類のショットを紹介したのですが、基本的にこれらのショットを押さえればコマーシャルや映画、ミュージックビデオなどの撮影は行えると思います。これに加えて照明を活用したり、自分スタイルのショットを見つけて撮影してみるというのも良いでしょう!
カメラアングルや三分割法といったフレーミングについても詳しく紹介したいと思うので、ぜひチェックしてみてくださいね!
(MIKIO)