プリプロダクション映像ハック脚本

ストーリーの場面転換であるプロットポイント(Plot Point)やミッドポイント(Midpoint)を理解して、物語を引き立たせよう!

以前キュリオシーンでは三幕構成が物語を作るにあたって、重要な要素であるということを紹介したと思いますが、物語のそれぞれの幕にまたストーリーであるプロット(Plot)を組み込むことでより面白いものに出来る事ができます。

プロットは詳しく説明するともう少し複雑なものなってしまうものの、ざっくりいうと全体的なストーリーの中にあるミニストーリーというイメージです。

プロットについては以前キュリオシーンで投稿した「プロット(Plot)ってなんだ?ストーリーとプロットの違いとその関係性を見てみよう」という記事内で紹介しましたが、今回は三幕をそれぞれ繋げて、物語を更に引き立たせる事ができるプロットポイント(Plot Point)について話したいと思います。

プロットポイントについて詳しく話す前に、三幕構成プロットについておさらいしていきましょう。

まずストーリーを作るにあたって多くのハリウッド映画で取り入れられているのが三幕構成(Three-act Structure)というもの。下の図を見て分かるように、ストーリーを設定(Setup)対立(Confliction)解決(Resolution)の3つに別けていきます。

スポンサード

なぜ分けるのかというと、物語や主人公の心情の変化を解りやすく伝えるためです。もし3分位の作品であれば「弱い主人公が、強い敵を倒した」のストーリーで良いのですが、これが90分または120分の映画となると、これだけだとあまりインパクトを与えることが出来ず、つまらないものになってしまいます。

ここで必要になってくるのがプロット(Plot)というもの。プロットは三幕構成の中に組み込む小さいストーリーになります。

先ほどの例を出してみると「弱い主人公、敵に倒される」、「主人公トレーニングする」、「主人公、敵を倒す」の様に全体的な話の流れは変えないものの、それぞれの幕に主人公やその周りに起きるイベントがプロットになるのです。

映画を見ていると主人公の恋人や友人が事故にあったり、それまで上手く行っていた事が突然だめになったり、逆に悪いこと続きだったことが良くなったりと、劇的変化なシーンが多いですよね。これらの多くはプロットによるものなので、欠かせない存在になっているのが分かると思います。

面白いプロット揃っていても、それぞれ上手く繋げないと一つのストーリーとして成り立たなくなります。劇的に場面転換を行うにはプロットポイント(Plot Point)が重要になってきます。

スポンサード

プロットポイントは簡単に言うと三幕構成内の幕と幕を繋ぐイベントのこと。主人公は何らかのキッカケで行動を移し、その行動によりストーリーの方向性を変える要素なようなものです。

ちなみにプロットポイントはターニングポイント(Turning point)とも呼ばれます。

基本的に三幕構成の中にプロットポイント1(PP1)、プロットポイント2(PP2)、またはファースト・ターニングポイント、セカンド・ターニングポイントのように2つしか存在せず、一つのプロットポイントを通ったタイミングで、次の幕に移ることになります。

また三幕構成は1:2:1という比率なっており、第二幕前半が終わった物語の中盤にミッドポイント(Midpoint)というものも存在します。

基本的にミッドポイントはプロットポイントと同じものですが、多くのハリウッド映画などでは主人公に劇的な変化が起きる、ストーリーの中で一番ピークを迎えるポイントになっている事が多いです。

多くの場合、120分の映画であればプロットポイント1は映画の20-30分頃に、ミッドポイントは60分頃に、そしてプロットポイント2は80-90分の間に作られます。脚本は1ページ/1分なので、「20ページ頃にプロットポイント1」のように覚えておけば構成しやすいと思います。

プロットポイントやミッドポイントは主人公やその周りに起きる大きなイベントでもあれば、台詞などで済ませる小さいものもあったりします。基本的に話の流れが変わればプロットポイントやミッドポイントとして成立します。

以前、プロットを説明した記事で使用したストーリーにそれぞれプロットポイントなどを付け加えてもう少し面白くしてみました。

シンプルな三幕構成で作ったストーリーはこちら。

(1)ユウジは騙されて作ってしまった借金を少しでも返そうとカジノに通っていた所、借金を作らせた張本人のカトウが現れる。(2)ユウジはカトウと対決し負け続けるが、そのイカサマを発見する事が出来たことで、(3)復讐と借金返済をなし遂げる。

そして三幕構成を1:2:1のフォーマットに変えて、プロットポイントを付け加えた結果がこちら。

(1幕)ユウジは騙されて作ってしまった借金を少しでも返そうとカジノに通っていた所、借金を作らせた張本人のカトウが登場。彼がユウジの借金を作らせたことに怒りを覚え、持っている全財産を賭けて勝負に挑む。

(PP1)しかしその賭けは大失敗に終わり、1億という借金を作ってしまう。路頭に迷っていたユウジは橋から飛び降りようとした所、通りかかったチサトに声を掛けられる。

(2前幕)ユウジは経緯を説明していると、一生懸命聞いてくれるチサトに心を開き、二人は意気投合する。ユウジは無茶な事はせず、二人で一緒に生活が出来るようにコツコツを一生懸命仕事を始めた。

(ミッドポイント) 数カ月経ってチサトの誕生日の日にバラの花束とプレゼントを買いに街へ出た所、チサトがカトウと車に乗っているのを見かけてしまう。

(2後幕)そのことについてチサトに問いかけたが、その事は何も言わずに別れを告げられる。後日カトウからは「楽しかったか?」とメールが来て、二人がユウジを弄んでいたことを知る。彼はさらに落ち込み、何も手をつけられなくなってしまった。

(PP2) 何もかも失ってしまったユウジだが、チサトに渡したはずのプレゼントがなぜかテーブルの上にあった。チサトはどうやら別れを告げた日に、プレゼントの中にUSBドライブを仕込んでいたのだった。そのUSBドライブを見ると、カトウのこれまでの悪事の証拠やギャンブルへのイカサマが詳しく書かれていた。彼はそれを武器にしてカトウに勝負を仕掛けようと決心する

(3幕) ユウジは自分の命と引き換えにカトウの全財産に掛ける。カトウはユウジに切り札があるということを疑問に思わず勝負に挑む。

(クライマックス)4回のゲームで全てユウジは負け続けるものの、USBドライブに入っていたイカサマを見抜き、逆転勝利を収める。カトウは約束通り、ユウジに全財産を引き渡すことになる。

(エンディング) この勝負に心から喜んでいたのはチサトだった。ユウジを騙したことに負い目を感じつつも、ユウジはチサトは脅されていた身であったことを知っており、和解し二人は結ばれることになった。

プロットや三幕構成を投稿した記事の中に例として出したストーリーですが、同じ内容でも、プロットポイントやミッドポイントを付け足すことでさらに深いストーリーになりました。

上記の例を踏まえて、三幕構成で使われる要素をもう一度見ていきましょう。例で出したストーリーと下の一覧を見ながらだとイメージしやすくなると思います。

  • 第一幕:設定(1st Act:Setup) – 主人公のキャラクター像、年齢や背景などが紹介される
  • インサイト・インシデント(Incite Incident) – 主人公やその周りに起こる出来事(事件)。
  • プロットポイント1(1st Plot Point) – そしてその出来事に直面する必要がある主人公は解決に向けて動き出す。
  • 第二幕 前半:対立(2nd Act: Confliction/Confrontation) – 主人公が待ち受けている障害に挑む。
  • ミッドポイント(Midpoint) – 主人公が直面する大々的な変化。成功するシーンなど
  • 第二幕 後半 – 引き続き障害に挑む主人公がさらに厳しいものになってくるシーン。ミッドポイントで成功していたものが、ダメになる、恩師や友人が死に、または裏切られる等。ストーリーによってはキャラクターの持っているものがすべてなくなるなども。
  • プロットポイント2(2nd Plot Point) –  主人公は更に大きくなっていく問題を解決するために動き出す。何か良いアイディアが思い浮かぶなど。
  • 第三幕:設定(3rd Act:Resolution) – 一番盛り上がるポイントでプロットポイント2で見出したアイディアを使って解決する。
  • クライマックス(Climax) – 物語のピーク部分。主人公の問題が解決できるシーン
  • エンディング(Ending) – 物語全体のエピローグ。ハッピーまたは悲しいエンディング

 

プロットポイントやミッドポイントは映画のジャンル、演出方法によって色々ありますが、筆者は「ドーン!」という感じにインパクトのある変化がある映画は好きです。

ただ、インパクトが強すぎると大げさに感じてしまったりする事がありますが、ひとまず頭の中にあるストーリーを書いていってからブラッシュアップしていきながら細かい所調整していくと良いでしょう。

合わせて読んでおきたい関連記事:

 

(MIKIO)

Additional Photos: Green Chameleon,Hisu lee, Brendan Church,Denys Argyriou

MIKIO

小学生から映像制作に興味を持ち、15歳の頃に部活のメンバーと自主映画を制作。後にフィリピン、セブ島に移って現地や海外の企業向けにTVCM、VPといったコマーシャル制作を提供。現在は帰国し、福岡で映像制作などをしています。主に撮影や編集を得意ですが、案件によってはディレクターやプロデューサー行うこともあります。

関連記事

Back to top button