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お馴染みのトランジション、ディゾルブはどのような使い方があるの?歴史や使い方を見てみよう

映像作品を編集している時にどのトランジションを使っていますか?

モーショングラフィックスを使ったものからシンプルなカットまで色々ありますが、クリップを徐々に現れるようにするディゾルブ(Dissolve)もよく使うトランジションですよね。

クロスディゾルブ(Cross Dissolve)、クロスフェード(Crossfade)、フェードイン・フェードアウト(Fade in/Fade out)など様々な呼び方がありますが、不透明度を使って複数のクリップを登場させるトランジションの総称を「ディゾルブ」と呼びます。

ディゾルブはトランジション感が出るので手軽に導入できる反面、使いすぎると逆にチープさや時代遅れ感が出てしまう可能性があるので「使い所が難しいトランジション」でもあったりするのです。

今の時代はシンプルに別のショットを挿入するカット(Cut)の手法が取られていることが多くなっているものの、ディゾルブは使い方次第で面白い演出を加えたりことが出来るので、活用してみることをオススメします。

今回の記事ではそんなディゾルブの歴史や用途などについて詳しく紹介したいと思います。正しく知ることで映像編集に役立つはずなので、最後まで読んでみてくださいね!

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ディゾルブの歴史

Premiere ProやFinal Cut Proなどのノンリニア編集アプリではクロスディゾルブのをクリップの間に追加するだけでトランジションを簡単に追加できますが、フィルムが主流だった時代では時間とお金のかかるトランジションでした。

映画の中で一番最初にディゾルブが使われたとされる作品が1899年にジョルジュ・メリエス(Georges Méliès)が監督した「シンデレラ(仏:Cendrillon)」とされており、メリエスの有名作品「月世界旅行(1902年)」でも見られます。

当時はオプチカル・プリンター(Optical printer)を使って、現像済みの2つのフィルムを新しいフィルムに焼き付ける手法が使われるため、撮影に加えてフィルムラボでの作業やコストがかかるだけではなく、現像するまで確認できないなどのデメリットがありました。

90年代以降はデジタル化が進んだ事でオプチカル・プリンターを使った方法がなくなり、現在ではパソコンと編集アプリなどがあれば簡単に追加できるように変化しました。

ディゾルブの種類

ディゾルブは主に3つの種類に分けることが出来ます。使用する編集アプリなどによって名称が違う場合もありますが、基本的に同じです。

クロスディゾルブ(Cross Dissolve)

クリップを上下に配置し、最初のクリップの不透明度が0%から100%に次のクリップが同じタイミングで0%から100%になるように設定し、交差するトランジションクロスフェード(Crossfade)とも呼ばれます。

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フェードイン(Fade in)

クリップの不透明度が0%から100%に変化するトランジション。クリップが現れる前は黒または白のフレームを配置することがほとんどであるため、これに合わせて黒(白)からフェード(Dip to Black(White))と呼ばれることもあります。

フェードアウト(Fade out)

フェードインの逆でクリップの不透明度が100%から0%に変化するトランジション。

ディゾルブのトランジション時間は特にルールはありませんが、ほとんどの場合は映画の場合だと24fps(1秒程度)が多く使われています。またジャンプカットの違和感を少なくするため、6fps(別名:ソフトカット)を使うこともあります。

ディゾルブの用途

簡単に導入できるディゾルブですが、使い過ぎるととてもしつこく感じてしまうので、「このトランジションを使う必要があるのか?」などを考える必要があります。

クロスディゾルブなどは一見ただのトランジションですが、使い方次第では映像コンテンツの演出を手助けする重要なツールに変えることも出来ます。こちらの項目ではそんなディゾルブが役に立つ用途を紹介していきましょう。

時間の変化

ディゾルブがよく使われる演出の一つが「時間の変化」です。

主人公がパソコンで作業している」というシーンがあった時に全ての出来事を視聴者に見せるのは大変ですが、様々なショットをディゾルブを使って演出すると時間が経ったように感じることが出来ます。このようなエフェクトはフラッシュバックなどのシーンでも活用できます。

ロケーションの移動

部屋から海へなどロケーションの移動を演出する役目としてディゾルブが使われることもあります。時間の変化と同じですが、通常のカットよりドラマチックにすることが出来ます。

登場人物をフレームの同じ位置に配置し、ディゾルブを使って登場人物は動かないが、背景が変わるなどのテクニックも使えます。

オープニングやエンディングに

 

フェードイン・アウトは主に物語の始まりや終わりに活用されることが多いです。フェードインを行うことで、視聴者はゆっくりと映像の世界に引き込まれるし、フェードアウトをすれば背景黒のクレジットロールに違和感なく見せることが出来ます。

必ずしも必要ではありませんが、オープニングなどに迷ったらフェードをかけるというのも一つの手かもしれません。

登場人物の心境

登場人物の思考や心境、夢など現実では視覚化出来ないものをディゾルブを使って演出することが出来ます。

1979年の映画、「地獄の黙示録」のように複数のクリップをフェードイン・アウトを繰り返したり、登場人物のショットを半透明にして考えていることを見せると面白いかもしれません。

アートとして

ディゾルブは映像のアートとして使われることもあります。下は映画の冒頭で多くのクロスディゾルブを使用している「市民ケーン(1941年)」の例です。

こちらのシーンでは背景に見える城の窓に合わせてショットを切り替える「マッチカット(Match cut)」が使われており、城がより印象に残るようにディゾルブが活用されています。このように演出やアート目的でディゾルブを使ってみるのもアリです。

近年ではあまり使われなくなっているディゾルブですが、使い方次第では面白いものになるかもしれません。今回のことを思い出してディゾルブを自分の作品にぜひ活用してみてくださいね!

(MIKIO)

Additional Photos: Goatart-Wikipedia,John Moeses Bauan

MIKIO

小学生から映像制作に興味を持ち、15歳の頃に部活のメンバーと自主映画を制作。後にフィリピン、セブ島に移って現地や海外の企業向けにTVCM、VPといったコマーシャル制作を提供。現在は帰国し、福岡で映像制作などをしています。主に撮影や編集を得意ですが、案件によってはディレクターやプロデューサー行うこともあります。

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