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映像の全体的なイメージを変えることが出来るアスペクト比(Aspect Ratio)。その種類と歴史を見てみよう。

YouTubeやテレビ、映画、広告などを見ていると映像によって画面のサイズが違っていると感じたことはありませんか?

今のテレビはほとんど横に長い長方形になっていますが、20年前のテレビだと正方形でした。映画ではシーンにスペクタクルを与えられるように更に細長い画面になっていますが、実は画面アスペクト比(Screen Aspect Ratio)というものによって映像のサイズが決められているのです。

アスペクト比の歴史は写真フィルムを映像として使用しはじめた、1891年頃から使われており様々な変化を遂げて現在に至っています。今回はそのアスペクト比はどのようなものがあるのか?歴史についても詳しく紹介したいと思います。

アスペクト比(または画面アスペクト比)は本来、オブジェクトの縦横の比率を数値化したもので、映像以外にも飛行機や建築物などでも使われます。映像や写真などでも使われており、写真だと3:2、映像だと4:3、16:9だったり、映像であれば縦を1として2.35:1、1.33:1などの数字にして表しています。

 

4:3 / 1.33:1

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ただの写真フィルムをモーションピクチャー(Motion Pictures)として技術を展開させた1890年頃にトーマス・エジソン研究所内で働く、ウィリアム・K・L・ディクソンという発明者が35mmフィルムを使用したカメラ、キネトグラフ(Kenetograph)を作り出し、その撮影された映像をキネトスコープ(Kinetoscope)で見れるようにしました。

撮影された一コマの画は35mmフィルムの4パーフォレーション(Perforation)のサイズに収まり、アスペクト比が4:3(1.33)となりました。なぜ4:3になったのかは不明ですが、後のサイレントフィルムを中心に1909年以降、標準化されました。

*パーフォレーション: 映画と写真フィルムの縁に開けられた四角型の小さい穴のこと

1.37:1 / アカデミー比(Academy Ratio)

サイレントフィルムに音が付け加えられるようになった1929年以降のトーキー時代ではフィルムに音声を付け足す技術を施しました。前述の1.33のフレームに音声を付け足そうとすると、横幅のサイズが小さくなってしまうため、1.33のアスペクト比にやや近い1.37の比率を作り出しました。

これは1937年に映像芸術科学アカデミー(Academy of Motion Pictures Arts and Sciences)という団体により、標準化されました。ちなみに毎年3月に行われるアメリカ最大の映画賞、アカデミー賞を開催している団体です。

ワイドスクリーン

それまでハリウッドは映画産業の黄金期にしばらくいましたが、1950年代にテレビが一般家庭で普及していくと観客は映画よりもテレビのコンテンツを楽しむようになったのと、アメリカ政府による独占禁止法の告訴を行われたパラマウント映画によるスタジオ・システムの崩壊により、映画産業がぐっと落ちてしまいました。

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どうにかしても観客が来てくれるように映画のジャンルを増やしたり、膨大な予算を積む映画が多く作られましたが、4:3のアスペクト比が主流だったテレビと差別化を図るため、更に広いアスペクト比を作ることになりました。種類が多いため全ては紹介しきれませんが、この時当時登場したものは以下のものです。

  • シネラマ(Cinerama) – アスペクト比、2.59:1。27mmレンズを付けた35mmフィルムカメラを3つ使用して同時に撮影し、映写機の際に同じように3つ使用して同時に写すもの。2年ほど大ヒットしたものの、スクリーンをカーブ状にした映画館が必要になるなど、技術的に費用的にもかなり掛かるものになってしまいました。

  • 1.66:1(5:3,15:9) – パラマウント映画によるカーブ状の映画館に対応していなくても、ワイドスクリーンにすることが出来た。しかし実態は1.37(アカデミー比)で冊得された映像を上下クロップするものになっていました。ちなみにこのアスペクト比はヨーロッパの映画館を中心に使われているもの。

  • 2.35:1(21:9) – 現在の多くの映画でも使用されているアスペクト比。35mmフィルムをアナモフィックレンズを使って撮影することで横長の映像をアカデミー比ほどのサイズに収めることに成功。映写も同じようにアナモフィックレンズを使用し、ワイドスクリーンにしています。カメラで有名なパナビジョンもこのアスペクト比に対応し、更に改良を行って2.76にしたことで一躍人気になりました。

  • 1.85:1 – 1953年にユニバーサル映画によって35mmフィルム用に開発されたアスペクト比。後にアメリカやイギリスの映画館で標準化されるものになっています。

 

  • IMAX(1.43:1) / Todd AO(2.20:1) – 35mmフィルムを使用していた他のカメラと違って更に上を目指していたのが、70mm/65mmフィルムを使用したIMAXやTodd AOです。現在は70mmフィルムは存在しますが、Todd AOが開発された当時は35mmフィルムを縦ではなく、横で使うことでさらに広い面積の映像を撮ることが出来ました。ただ、その分シネラマのように技術と費用が嵩むため予算が結構必要でした。

16:9(1.77:1)

1980年代に入ってから、当時のテレビの標準画質(SD)よりもさらに高画質な映像を目指すため、ハイ・デフィニションHDの研究が進められていました。

80年代に主流だったアスペクト比はテレビで使われていた1.33:1(4:3)、ヨーロッパを中心に1.66:1、アメリカでは2.35:1、1.85:1など様々なアスペクト比でもカバーできるように提案されたのが、1.77:1の現在主流の16:9のアスペクト比なのです。

 

100年の歴史の中でこれ以外にも色々なアスペクト比が登場しては消えての繰り返しでしたが、その技術がしっかりと現在に受け継がれているのがわかると思います。

基本的にデジタル一眼カメラやスマートフォン、業務用カメラで使用されるアスペクト比は16:9なので、上記の数字をすべて覚える必要はありませんが、編集等で映画のように撮りたい!と考えている場合は今回紹介したアスペクト比を活用してみると良いでしょう!

 

(MIKIO)

Additional Photos: MarkWarren,Chemical Engineer

MIKIO

小学生から映像制作に興味を持ち、15歳の頃に部活のメンバーと自主映画を制作。後にフィリピン、セブ島に移って現地や海外の企業向けにTVCM、VPといったコマーシャル制作を提供。現在は帰国し、福岡で映像制作などをしています。主に撮影や編集を得意ですが、案件によってはディレクターやプロデューサー行うこともあります。

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