Final Cut Proポストプロダクション・編集映像ハック

[Final Cut Pro] HDRで撮影されたクリップをSDRに変換したり色補正する方法を見てみよう

HDRとは「High Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)」の略で簡単に言えば被写体の明るさを極力均等にし、暗いところも明るいところも同じ明るさで見えるようにする技術のことで、現在スマートフォンを含むカメラにHDR写真やビデオを撮影できる機能が搭載されることが多くなりました。

HDRで撮影された映像は明るいところも暗いところも均等に明るさが調整されているので、被写体と背景の明るさを気にせずに撮影できるのがメリットですが、HDRのクリップの編集や再生にはHDR対応のデバイスやディスプレイが必要になるので注意しましょう。

iPhoneなどの場合、知らずにHDRビデオの設定が反映されていることもあり、FInal Cut Proに読み込む時に正しく表示されない場合があります。

上の画像はiPhone 12 Pro Maxで撮影されたクリップになるのですが、FinderやQuickTimeで確認してみるとクリップの露出が問題なく表示されています。

このクリップをFinal Cut Proに読み込み、ブラウザとビューアで確認しても一見問題ないのですが、プロジェクト(タイムライン)に追加するとクリップの露出がとても明るくなり、「HDRクリップをSDRプロジェクトへ追加」のポップアップが現れます。

これはFinal Cut Proのプロジェクトの色空間(カラースペース)がデフォルトでは「SDR」である「Rec. 709」に設定してあるため。SDRとは「Standard Dynamic Rande(スタンダードダイナミックレンジ)」のことで、HDRに比べて明るさの範囲であるダイナミックレンジ(Dynamic Range)が少なくなります。

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SDRはHDRに比べ明るさの制限があるものの、どのディスプレイやデバイスでも再生できるメリットがあるので、HDRで撮影したけれどSDRに変換したい場合は「HDRツール」のエフェクトをクリップに適用する必要があります。

HDRツール

HDRクリップをタイムラインに追加した後で「HDRクリップをSDRプロジェクトへ追加」のポップアップが表示されたら「OK」をクリックします。

次にエフェクトブラウザの「カラー」の中にある「HDRツール」をHDRのクリップにドラッグ・アンド・ドロップし、エフェクトを適用させます。

タイムラインでクリップを選択しビデオインスペクタの「HDRツール」にある「モード」の項目からHDRクリップに合った設定をドロップダウンメニューから選択します。筆者の場合はiPhone 12 Pro Maxで撮影されたものは「HLGから Rec.709 SDR」がベストな結果となりました。

HDRツールでSDRにするとクリップは自動的にSDRとして変換されます。編集や書き出し時にはHDRが反映されないので注意しましょう。

HDRクリップをHDR環境で編集する

前の項目のようにHDRクリップをSDRに変換するのではなく、編集から書き出しまでHDRにしたい場合は編集を開始する前にライブラリとプロジェクトの色空間の設定を変更する必要があります。

サイドバーからライブラリを選択し、ライブラリのプロパティインスペクタを表示させ、ライブラリ名の右側にある「変更」をクリックします。

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ライブラリ”〜”の色処理設定を変更します」と表示されるので「Wide Gamut HDR」を選択し、「変更」をクリックします。

次にプロジェクトの設定です。新しくプロジェクトを作成するか、既存のプロジェクトの設定変更を行う際に「色空間」の項目を操作できるようになります。

デフォルトではSDRである「標準 – Rec. 709」が選択されていますが、ドロップダウンメニューからクリップに合ったHDR色空間の設定を選びましょう。iPhoneのクリップの場合は「Wide Gamut HDR – Rec. 2020 HLG」が最適でした。

HDRの環境に設定してあるので、先ほど追加した「HDRツールは」不要となり、HDRのまま編集、色補正やグレーディングを行うことができます。上の画像はクリップが白飛びしているように見えますが、スクリーンショットの出力画像がHDRではなくSDRになっているため。編集時にHDR対応のディスプレイであれば問題なく表示されているはずです。

プロジェクトを書き出す際は通常の書き出し方法でHDRのプロジェクトを書き出すことができます。この際「設定」の「色空間」は「Wide Gamut HDR」になっており、コーデックはApple ProRes 422 HQやProRes 4444など10bit以上のカラー出力に対応したものである必要があります。

HDRは明るさを均一にしてくれる便利な形式ですが、編集や再生するデバイス、ディスプレイによって上手く出力されない場合があるので、HDRの環境に問題がなければ後者のようにHDRの設定で編集し、SDRの環境で再生する場合はHDRツールを使ってSDRに変換するようにしましょう。

(MIKIO)

MIKIO

小学生から映像制作に興味を持ち、15歳の頃に部活のメンバーと自主映画を制作。後にフィリピン、セブ島に移って現地や海外の企業向けにTVCM、VPといったコマーシャル制作を提供。現在は帰国し、福岡で映像制作などをしています。主に撮影や編集を得意ですが、案件によってはディレクターやプロデューサー行うこともあります。

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